既知のなかの未知を届ける
企業人 / GHOST
土居 瑞季
僕はゴーストという屋号でデザイン活動をしている。活動の軸は「死後にも残る価値をつくる」こと。
それは、混ぜるな危険に参加している時も変わらない。ここでは読香文庫の裏側にある、混ぜるな危険の想いについて少し紹介する。まずはその前段として、読香文庫における僕の役割から。
小説と香りをむすぶ、ひと手間
僕は読香文庫において、小説と香りをむすぶための“あいだ”をつくる「プロット」を担当している。「プロット」の仕事は、小説の読解担当が作成するレポートをもとに行う。
まずレポートを手掛かりに、小説から文体やリズム、ストーリーや世界観、作者の思想や癖などの要素を収集していく。それらが読書体験にどんな作用を与えているのか、一つ一つの意味やその関係性を読解する。その結果を一つの図で表現することが「プロット」の役割だ。作成した図は選香担当へと引き継がれ、香りへと変換されていく。
大切にしているのは、小説と香りを直接結びつけないこと。“小説”を“体験”に抽象化し、“体験”を読解して“香り”へと具体化するひと手間に、混ぜるな危険の想いを込めている。
2度目のワクワク感
僕らの目的は、見慣た景色にワクワクする瞬間を取り戻すこと。いつもの通勤路、長く続いている趣味、地元の街並み。一番初めにあったワクワク感は、慣れとともに徐々に失われていく。新しい刺激を求めていても、“いつもの”という安心感を逸脱するのは億劫だ。しかし、一歩踏み出して”新しい見方”を見つければ、見慣れた景色にも新しい姿を発見できる。その時の高揚感、もう一度ワクワクするための発見を、僕らは嗅覚(香り)という“新しい見方”で作りたいと考えている。“新しい見方”で得た再発見は、目で見て、目で感じるいつもの道にワクワク感を取り戻してくれる。その実現のためには、小説の表面ではなく、本質を香りで表現しなければならない。だから、一度”体験”に抽象化する手続きを踏んでいる。
混ぜるな危険の価値は、香りを売ることでも、香りで物を売ることでもない。香りで“新しい見方”を生み出し、停滞してしまった物事を前に進めることだ。
スマホが手放せなくなった今では、何かを手に入れたり体験する前に、レビューなどの様々な情報がいやでも目に入ってしまう。実体験の前に、安心感を得てしまう現代だからこそ、混ぜるな危険つくる“新しい見方”には単に楽しいイベントを超えた意味があると考えている。
混ぜるな危険 / 企業人 GHOST
土居 瑞季
1993年生まれ
Twitter / https://twitter.com/doidoi_ghost