混ぜるな商店

香りと道具

大工職人 / 鈴康工務店
鈴木 勇司

まず初めに、僕は「香り」とはかけ離れたように思える大工職人を本業としています。

大工職人という職において、「道具」は切っても離せない関係にあります。
「職人の技術は道具を見れば一目でわかる」というように、、、

だから僕は混ぜるな危険においても「道具」というものを軸にプロジェクトに携わろうと考えました。
「本を入れる箱(道具)」は世の中にたくさん存在しています。
しかし、「香りのついた本を入れる箱(道具)」はこの世に存在していなかったのではないでしょうか?
そんな奇妙な箱【密香書箱】のデザインと制作を担当しています。

密香書箱とは

密香書箱とは簡単にいうと「香りのついた本」を保管する箱です。
では、「香りのついた本」を保管する箱はどのような条件が求められるのか?

1.香りの拡散を極力抑える

2.箱を使う際の動作までアプローチする

3.香りの体験価値を向上させる

ではこの条件を満たすためにどのようなスタディを行ったか

1.「香りの拡散を極力抑えるため」のスタディ

  • 本の寸法から適切な寸法を決める
  • 香りが漏れない材の厚み等の検証
  • 本棚に収まる寸法と形状を決める
  • 密閉するためのディテールの検討
  • 蓋と箱の密着度を上げるための木口加工の検証
  • 本の香りに干渉しすぎない材料の選定

2.「箱を使う際の動作までアプローチするため」のスタディ

  • 箱の開閉をスムーズにする
  • 栞以外でどう読書中の本に目印をつけれるか
  • ストレスなく本を手に取れるようにする
  • 転倒しないバランスの検証

3.「香りの体験価値を向上させる」のスタディ

  • 読み終えた後の本のあり方を考える
  • 蓋と箱の在り方の検証
  • インテリアとしてのあり方を考える
  • 香りと本より主張しすぎないフォルムであるか

これらのスタディを行った結果、密香書箱は3つの要素を持った箱へとなりました。

考える隙を与えてくれない体験

歴史ある建物を修理や解体をする中で、名も無き職人が残す手仕事に出会うことがあります。
そこには圧倒的な技術があり、名も無き職人達の手仕事に一瞬で目を奪われます。
有名な誰かが作った、高価な材料を使った、そんな情報を考えることすら許してくれません。
このような感覚を僕は読香文庫でも感じることができました。
香りを嗅ぎ、僕は考える暇もなく、番号を選択していました。
情報溢れる世界で、最小の情報のみでそのモノを判断できる、
この体験は現代においてとても貴重なものではないでしょうか。


混ぜるな危険 大工職人 鈴康工務店
鈴木 勇司
1993年生まれ
Instagram / https://www.instagram.com/yuji.szk01/