混ぜるな商店

世界と混ざるために、本を読む。

本屋 / ブックディレクター
鎌田 裕樹

なぜ本を読むのか

本屋で働くようになって10年が経ちます。

他人にそう言うときまって、本がお好きなんですねと聞かれますが、いつもピンときません。
自分にとって、本は、何かを知りたいという欲求を満たすための便利なツールで、本屋で働くことが一番の近道だと思ったからこの仕事を選びました。

本が扱う範囲は、世界のすべてです。
人がなぜ生きるのかといった形而上学的な問いから、今晩のちょっと気のきいた献立まで、頭のなかの本棚を探ると、それらに向き合うための気づきを与えてくれます。
その点で、心から信頼しているし、やはり本が好きなんだと思います。

あなたがまだ知らない世界を知るために

本を介した、自分が知らない世界との予期せぬ遭遇には、新鮮な価値観と視界が拓けるような清々しさがあります。
本と香りが出会う「読香文庫」。
あなたがこれまで感じ得なかった知覚の領域へと踏み入れるきっかけになれば、そんなことを考えて形になった企画です。

「読香文庫」においての僕の役割はふたつです。

ひとつは、もちろん本を選ぶこと。

選定の前提は、読んで面白く、手元に置いておきたいと思う作品であること。
チームで話し合った大枠のテーマを解釈し、5つの作品が似通うことなく、バランスよくそれぞれの性質を発揮できること。
そのあとは、分析と選香を担当するメンバーへと手渡します。僕がそれぞれの作品にどんな香りがつけられたのか知るのは、実際に企画が始まってからで、毎回楽しみにしています。

もうひとつは、言葉を書くこと。

チームのコンセプトやアナウンス時の文章をメインで担当しています。
抽象化された概念や思いは、文字として書くことで明確な形になる。
本を読むことで得てきた知見や情緒を凝縮した文章が書けるように、腕を磨きたいと思います。

肩書きについて

「混ぜるな危険」での肩書きを「ブックディレクター」としています。それは、時代の変化とともに変容を続ける「本屋」という仕事を続けるなかで、自らの役割も大きく変わってきたからです。「本を売る」ためだけの「本屋」ではなく、「本屋としての思考」を駆使したあらゆるサービスを扱う広義の「本屋」として進化し、生きるために。その意思表示として。


混ぜるな危険 本屋 ブックディレクター
鎌田裕樹
1991年生まれ
https://twitter.com/tuning_books