視覚から嗅覚への翻訳
LE SILLAGE
米倉 新平
LE SILLAGEのコンセプトは 「香りを経験し、 嗅覚で楽しむ場所」です。
単なる香水のセレクトショップではなく、香りや嗅覚を通して何か新しい発見や楽しみを提供したいと常々考えています。香りを通して普段から見知ったものに新しい視点を生むという「混ぜるな危険」のプロジェクトはまさにコンセプトに沿った企画です。
読香文庫では、肌でも空間でもなく、本を選ぶ時に香りが使われます。
ここでは、選書、考察、分析という段階を踏んできた本を最終的に香りへと翻訳する部分を担当させてもらっています。
作者もタイトルも伏せた状態でプロットのみを見て、このイメージならこの香料、この世界観ならこういった系統といった感じで、香りの持つ色、音、形、質感、性格などを元に、本のキャラクターにあてはめていきます。
なので本のタイトルや内容と最終的に選ばれた香りの名前などに関係性はなく(たまたま合うことはあっても)、本のストーリーや世界観、作風、文体などと、香りの持つイメージや雰囲気が合うようになっています。
においはある意味強制的で、嗅いだ瞬間必ずなにかを思い浮かべることになり、好ましいかそうでないかなどの判断を強いられることになります。
普段視覚情報から判断している物事(例えば本を選ぶ)を、五感の中で唯一脳の感情や記憶を司る部分に繋がっている嗅覚で、より情動的に判断するといったいどうなるのか。もしかしたら、視覚だけでは気付けなかった新しい好みの領域を、元々自分自身の中に存在していた好みを、嗅覚が提案してくれたり引っ張り出してくれたりするのかもしれません。
混ぜるな危険 伝香師 LE SILLAGE
米倉 新平
1989年生まれ
webshop / https://lesillage.thebase.in